2015年 11月 22日
「車」〜左足ブレーキ |
この歳になると、運転免許の更新時にはいろいろ条件がついてくる。
「講習」と称して認知症かどうかを判定するらしき妙な筆記試験と、安物のゲーム機のようなちゃちな装置にお粗末なソフトを積んだもので「運転適性検査」がある。そして教習所のコースでの「実地」運転技術のテスト。
で、ここで取り上げたいのは「実地」でのことである。
使用する車種で「AT」(オートマティック・シフト)か「MT」(マニュアル・シフト)を選ぶことになる。こちらは免許を取得したのが1959年であるから当然MT世代だ。1970年代終わりまでMT車で過ごし、その後自家用車はATにしたが、業務用の車はMTであることが多く、ヨーロッパを旅行するとき借りるレンタカーは九割方MTであったので、AT・MT両者を永年併用して来た。
そこで、試験に際しては「クセ」のついてしまっているであろう乗り慣れていないMTよりは、面倒のないATを選んだ。そしてコースを走り出してブレーキをかける段になり「左足でブレーキ」を踏んだ。すると横に居る指導員がすかさず「左でブレーキを踏んではダメ!」と怒るのだ。
AT車を運転するときは「立っている者、親でも使え」で、ブレーキペダルは当然の如く(クラッチを操作する必要がないので)「遊んでいる左足」を使用している。それはAT車のブレーキペダルは幅広になっていて、左足で操作するのにまことに具合がいいからだし、右はアクセル、左はブレーキと、分業が判然としているから、事故が起こる度に問題とされる「踏み違え」現象は全く起こらないと言える。
周知のように、アクセル・ペダルとブレーキ・ペダルには床面からの高さの差があり、アクセルからブレーキに移動するには、右足を単に左横にスライドするだけではダメで、つま先を(または足を)上げてから移動させねばならない。咄嗟の場合の踏み違えは、常に起こり得る状態である。
片やMTの運転に慣れている者にとっては、「左足を使うこと」自体には何の抵抗もなく、強いて言えばクラッチは急速に踏み込むのが通常の動作であるに対してブレーキは徐々に踏み込むのが普通であることだろう。咄嗟の場合、左足をクラッチのクセが出て急速に踏み込めば、当然急ブレーキが掛かってむしろ目的にかなうのだ。踏み間違いの起こる可能性は随分低いのではないか。
だいたい「AT限定免許」であるのに、運転教習の時からしてなぜ「ブレーキもアクセルも右だけ」で操作するように教えるのか。こんな不合理な話しはない。左右の働きを全く別にしておけば、余程のことがない限り「踏み間違い」は起こらないだろう。
左足ペダルに反対する者の言い分に「初心者は常時左足をブレーキに乗せていてブレーキランプが点灯し続けるので、後続車が迷惑する」と言うのがあるが、これはまさに噴飯物である。MT車の場合でも、左足を常時クラッチに乗せて「半クラッチ」状態でいるのは、あるとすれば極々初期の「新米」時だけであろう。AT車で、右をアクセル、左をブレーキ横の床に置いて身体のバランスを取る状態でいて、ブレーキが必要になったときは、ペダルの形状が幅広になっているので、すこしつま先を持ち上げれば難なく作動させることが出来る。
「生涯左足でクラッチを操作しないことが決定している」人間に、「絶対左足をブレーキに使うな!」とはなんの論拠があってのことだろうか。単に「以前からの仕来り通り」という例の凝り固まった思考の産物でしか無かろう。運転教習の時から、左右両足を別の作業に使うことを教え込めばいいだけである。
とにかく「右足しか使わせない免許」を取らせた者にはよかろうが、「左足も微妙に使うことに馴れている免許」を保っている者の左足ブレーキに文句を付ける筋合いは皆無だと思うが如何だろうか。
by drinkingbear
| 2015-11-22 22:16
| コラム